胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは?
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は何らかの理由で胃の粘膜に傷がついた後、胃酸などの強い刺激により穴が開き、傷が粘膜の下にある粘膜下層や筋層などといった深いところまで達して、胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついてしまった状態のことをさします。
潰瘍が進行すると大出血や穿孔(胃や十二指腸の壁に穴があいてしまうこと)の可能性があり、輸血や緊急手術が必要になる場合があります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の主な症状
このような症状がある場合、胃潰瘍の疑いがあります。
- みぞおち辺りが痛い(心窩部痛・上腹部痛)
- 貧血・ふらつき・動悸・息切れ
- 吐き気、食欲不振
- 吐血・下血(黒色便・タール便)
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の主な原因
- ピロリ菌の感染
- 薬剤(非ステロイド系の消炎鎮痛剤や抗血小板薬など)
上記2つが主なリスク因子とされています
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とピロリ菌
胃潰瘍・十二指腸潰瘍はヘリコバクター・ピロリ菌感染が主な原因とされています。近年ではピロリ菌感染者数の減少や除菌治療の効果により、患者数も減少しています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍になりやすい人
ピロリ菌の主な感染経路は経口感染といわれています。日本の場合、上下水道の衛生環境が十分に整っていない時代に生まれ育った人の感染率が約80%と高く、10 〜20代では20%前後と著しく低くなります。
ご両親・ご兄弟など同じ生活環境で育ってきた家族が胃癌・胃潰瘍などピロリ菌感染を指摘されている場合は、同様にピロリ菌に感染している可能性が高くなります。
十二指腸潰瘍は胃潰瘍と比較して、若年層に発症しやすいとされていましたが、2017年の厚生労働省の患者調査によると、胃潰瘍の好発年齢は60〜70代、十二指腸潰瘍は60代と報告されています。
また、男女比は1.7:1と男性に多い傾向があります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の検査
胃透視(バリウム)検査
バリウム(造影剤)を飲んでレントゲン写真を撮影します。
胃粘膜の凹凸をみることで、潰瘍の診断をすることができます。
上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査
口または鼻から内視鏡を挿入して、食道、胃、十二指腸などの上部消化管を直接目で見て観察する検査です。
同時に、ピロリ菌の検査を行うことができます。
ピロリ菌検査
ピロリ菌検査には内視鏡を用いた検査法【培養法・鏡検法・迅速ウレアーゼ試験】と内視鏡を用いない検査法【抗体検査(血液、尿)、尿素呼気試験、便中抗原検査】などがあります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療、ピロリ菌の除菌治療
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療には酸分泌抑制薬【H2拮抗薬・PPI、胃粘膜保護剤など】の内服を行います。活動性出血を伴う病変の場合、内視鏡や血管内カテーテルによる処置が必要となり、この場合は入院が必要となります。ピロリ菌に感染していた場合は除菌治療を行います。抗生物質2種類と胃酸を抑える胃薬(酸分泌抑制薬)を朝・夕の1日2回・7日間続けて服用します。
服用から1か月以上経過した後に再度ピロリ菌検査をして、除菌治療の効果判定を行います。当院では尿素呼気試験による除菌効果判定を行なっています。当院採用薬の一次除菌の成功率は93%、二次除菌まで行なった場合は98%と報告されています。
ピロリ除菌治療により、潰瘍の再発リスクが軽減し、同時に胃癌の発がんリスクも減るということがわかっています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍Q&A
胃潰瘍になり現在薬を飲んでいますが運動は行ってもいいのでしょうか?
潰瘍の大きさ・深さ・治癒の程度などによって異なりますが、胃潰瘍からの出血が疑われる場合や、貧血に伴う症状がある場合は安静が必要です。
食事内容や運動制限については主治医に確認・相談するようにしてください。
胃潰瘍になった場合、必ずお薬を飲まなくてはいけないのでしょうか?
自然に治癒する場合もありますが、一方で病状が進行し、胃潰瘍・十二指腸潰瘍から出血・穿孔する可能性もあります。このため、基本的には内服が望ましいと考えます。
両親が胃潰瘍になっているので私もならないか不安です。胃潰瘍は遺伝するのですか?
遺伝ではありません。主な原因はピロリ菌感染または、薬剤性(非ステロイド系消炎剤)と報告されています。
ピロリ菌感染については、環境要因が主であり、ご両親・ご家族がピロリ菌に感染している場合は、同様に感染している可能性があります。
一度は胃カメラやピロリ菌感染の検査を受けることをお勧めいたします。